「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」の感想・考察(ネタバレを含む)です。
3つのシナリオのうち、青鱗の章・黄燎の章の2つをクリアしました。
「風花雪月」の世界観・キャラクター描写が非常に良かったので、今作では3国の違ったシナリオが見れることを期待してプレイしています。
風花雪月では、フォドラ大陸を支配する3つの国 アドラステア帝国、神聖ファーガス王国、レスター諸侯同盟から主人公が属する国を選ぶことでシナリオが分岐していました。
今作、無双でも同様に3国を選択するシナリオ分岐方式がとられています。
しかし、今作ではうち1つの黄燎の章において、級長となるクロードが原作「風花雪月」と大きく異なる選択をとることから賛否両論の評判となっています。
Twitterで検索したところ、「無双クロードは別人」という人も散見されます。
今回はそういった点も含め、感想を踏まえながら原作との差異とクロードの考えについて考察してみます。
以下、ネタバレあり。
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目次(クリックで移動)
賛否両論のシナリオ
黄燎の章が否定的な意見が出る理由は、第二部の展開にあります。
- レスター同盟は教団を排除するという目的で帝国と手を組み、セイロス教団・ファーガス王国に攻め込む
- クロードが指揮をした結果、帝国将を見殺しにする形となり仲間から非難される
上記2点について、詳細を振り返ってみます。
1. 同盟が帝国と手を組み、王国に攻め込む
黄燎の章 第一部では、原作同様に教団への宣戦布告にともなって帝国は同盟軍にも首都を落とすために攻め込んできます。抵抗する同盟軍は、クロードとグロスタール泊の策により帝国軍の撃退に成功。反撃に転じたところでパルミラ軍の強襲により中断。戦争前と同じ勢力図のまま、帝国・同盟はミルディン大橋を挟んで様子見の状態となります。
この時点では、帝国と睨み合いの状態から敵対する本編とそこまで差異はありません。
しかし、その状態から半年が経った黄燎の章 第二部において、クロードは驚きの決断をします。それは、「フォドラから中央教団(大司教レア)を取り除くという目的のため、帝国と盟約を結ぶ」というものです。
また、この直前に同盟を連邦国化し、クロードは初代国王に就任。
これ以降レスター連邦国軍は教団を保護する王国に向けてファーガスを侵略する形で攻め込みます。
「風花雪月」本編では4つのシナリオがありますが、いずれも第二部戦争編で帝国とクロードは敵対しています。帝国がフォドラ統一を狙っていることから、レスター同盟を存続させたいクロードとしては戦わざるを得ないからです。
また、ベレトと二人きりの場で「エーデルガルトのやり方では誰もついていけない」とも言っており、帝国とクロードはやはり相容れないことがわかります。
無双では本編で否定していた展開がされてしまったため、キャラが変わったと思う人がいても不思議ではありません。
2. クロードが帝国将を見殺しにして仲間から糾弾される
本編では描いた作戦をすべて成功させてきたクロードですが、二部の戦闘において身内から非難されるという「失敗」をします。
それが、「同盟軍を消耗させないために帝国軍の救援を後回しにした結果、帝国将ランドルフを死なせる」というものでした。
帝国との同盟が成った後、レスター連邦軍は教団と戦闘する帝国の救援に向かいます。
ここで、クロードは連邦軍の被害を極力減らしつつ教団戦力をできるだけ削ぐためにランドルフの救援を後回しにした結果、ランドルフを死なせてしまいます。
教団には勝利したものの、主人公シェズを始め仲間から非人道的だと非難されてしまう始末。
「クロードはこんな事しない」と思う人がいるのもまぁわからんではない。
個人的には、無双の状況では別におかしくないと思っています(理由については後述)が、ファンの求めていたクロード像と少し違ったのは間違いないでしょうね。
クロードの描写に関する考察
ここまで賛否の原因となるクロードの選択についての要約をしてみました。
ただ、これらのシナリオを踏まえてもクロード本人の性格や信条は本編とそう変わりないと考えています。
クロードの優先順位
まずクロードが何よりも大切にしているものは本編も無双でも変わらず、レスター諸侯同盟とその仲間達です。ここから彼の選択を見てみると、無双での展開も腑に落ちます。
「風花雪月」本編においてもパルミラ王子である彼にはパルミラに逃げ帰るという選択肢もある中ですべてのルートにおいて同盟の民を守るために盟主の役割を全うしており、舞台を降りるのはレスターとレスターに生きる人々がある程度決まってからです。
原作における各ルートのクロードの動向は以下の通り。
- 紅花:敗北時には帝国に従うよう諸侯に根回ししたうえで帝国と決戦。生死はプレイヤー選択
- 銀雪:諸侯をまとめたがグロンダーズ会戦で3軍とも大損害、クロード生死不明
- 蒼月:諸侯をまとめたがグロンダーズ会戦で敗北。 その後、デアドラで王国の救援を受けたる。同盟を解散し王国傘下とすることを決定し、フォドラを出る。(後にパルミラ王になる?)
- 翠風:新生軍はグロンダーズ会戦で勝利し、皇帝を打倒。同盟はフォドラ統一王国に編入、ベレト/ベレスをフォドラ王とし、クロードはパルミラに戻り王となる
・・・こうして並べて見ると銀雪と蒼月でグロンダーズ会戦を行う理由が怪しいですね。教団の編入が無くレスター同盟軍だけの軍となるこの2ルートで帝国領内に侵攻する理由がイマイチ薄いです。教団との連携なしで同盟が帝国と戦って勝てるとは思えないので、個人的には無双のシナリオ以上に違和感があります。
もともとグロンダーズ会戦は整合性よりも展開重視で作られている感じがあるので、ここは仕方ないかもしれません。
グロンダーズ会戦を除けば、紅花では同盟諸侯が生き残るよう配慮しているし、蒼月では王国との合併という形で生き残り、翠風ではレスターはほぼ無傷(※ネメシスによる被害はある)と、レスターはいずれのシナリオでも被害を抑えて戦争終結を迎えています。
ここからクロードは戦争のさなかでも戦争の後のレスターの扱いに重きを置いて行動していることがわかります。
帝国と手を組んだ理由
その上で、風花雪月本編の戦争編では王国が政変によってディミトリが死亡しており、王国としての戦力は非常に弱体化しています。このままだと帝国の勝利は時間の問題でした。
帝国が王国を制圧した場合、戦争の後に待っているのはレスターの属国化です。
無双本編でもクロードは力の差がある2国の状況になってしまうことを憂いていますし、エーデルガルトが統一後に行うことは貴族制の廃止であることからもレスターが解体され一新されることは間違いないでしょう。
だからこそクロードは各ルートで帝国の支配を受けないよう戦力を蓄えていたし、翠風の章では”きょうだい”であるベレト/ベレスを旗印としてセイロス騎士団を加えた新生軍(≠レスター軍)を立ち上げて、レスターの負荷を減らしつつ帝国とぶつかる選択をとります。
一方で、無双の状況は異なります。王国は政変前に即位を終えており、コルネリアを始めとする不穏分子を抱えつつも王国が帝国と五分の争いをしています。
ここでまず浮かぶのは、王国と手を結んで帝国に対抗するというシナリオ。
エーデルガルトに敵対する勢力同士が手を組めば、戦力的には互角以上の闘いが見込めます。実際に青鱗の章では、王国・同盟の連携が描かれていました。
しかし、万全の状態の帝国に立ち向かい続けるためには帝国の領土はあまりに広大です。
兵力としては連合軍と帝国は五分以上になると思われますが、領地を制圧統治しながらの長期戦はレスターにはできません。勝つためには数年かかると考えられ、レスターを含めて多くの人命が失われるでしょう。
事実、本編の蒼月・翠風でも、グロンダーズ会戦で皇帝直属軍に打撃を与えることで始めて帝国内部への進軍が可能になっています。
そこで「戦争の早期終結」「戦後レスターの利益拡大」の両立を狙う無双クロードがとった行動が、帝国と停戦して教団を排除するというもの。
ここで考えることは、教団の排除が手段なのか目的なのかという点です。
まず、クロードが教団を排除したいと思っていることは、作中でもクロードの口から語られています。
また、風花雪月本編においてもレアによる支配を終わらせたいことを望んでいることは明確に示唆されています。ただし本編では戦争後にレアではなくベレト/ベレスを新しい教団のトップにする算段があったことから積極的に教団と連携をとっていました。
これらの点から、「クロード個人の目的のために王国に攻め込んだ」という見方もできると思います。
ただ個人的には、あくまでも教団排除は戦争を終らせる手段であり、クロードにとっては手段と目的が一致したから選んだと考えています。
無双本編でもクロードは王国を滅ぼす気は一切なく、できれば戦争後も国力・兵力を残してほしいと言っています。これは「戦後のレスター」を考えた発言で、帝国とレスターの2国になれば国力差でレスターが負けるためです。帝国としては紋章を重んじる王国も支配下におきたいでしょうが、教団の排除が大義名分である以上は教団を差し出されれば戦争をやめざるを得ません。
実際に自国の民とレアを天秤にかけられたディミトリは、クロードの意図を汲み取ってか、断腸の思いながらレアの死守を諦めています。
打倒レアは戦争を終わらせつつ死人を減らす手段であり、ついでにレアの築いたフォドラの閉塞的文化も終わらせられるという感じですね。
以上から、風花雪月と無双でのクロードに思想的な乖離はなく、「レスターを守りつつできればフォドラ文化を刷新したい」という点でクロード本人の信条は一貫していると思います。
”きょうだい”を失ったクロードの孤独
一方で、今作の問題となっているのはクロードの孤独が解消されないまま終わってしまうことです。
先述してクロードが帝国将ランドルフを見殺しにしたことについても、クロードにとっては「レスターの仲間を最優先」した結果でしたし、ランドルフもできれば助けたいとは思っていました。
ですが、相棒であるシェズや後見人ともいえるジュディットにも怒られるだけで、彼の苦悩に寄り添える仲間がいませんでした。この後からクロードは仲間の意見を大切にするようになりますが、一方で王になってしまったクロードと同じ視点で話し合えるキャラがいない状態となってしまいます。ここでの問題は、「クロードの苦悩が誰にも理解されない」ということです。
原作ではプレイヤーであるベレト/ベレスに本音を打ち明けてくれるため、クロードの考えは比較的わかりやすく示されていました。ですが、無双主人公シェズはあくまでも傭兵であり、クロードと同じ視点で並び立つには至っていません。
もちろんクロードが王になる決意をしたのは仲間がいるからではありますが、裏を返せばそれはクロードが一人で背負い込む覚悟をしたということです。
さらに、クロードが王になる前の第一部ラストにおいて、クロードは腹違いの兄であるパルミラ王子シャハドを討つ決断を強いられています。
兄であるシャハドともできれば一緒にパルミラとフォドラを繋ぎたいという思いがあったのか、この時のクロードは心の底から残念そうでした。
本編でクロードがベレト/ベレスを”きょうだい”と呼ぶことからも、クロードは横に並んでくれる人を求めていたのではないでしょうか?
ローレンツはレスターを繁栄させるという一点でクロードと並び立てるキャラクターではありますが、クロードの理解者という点では期待できません。
ヒルダは王になることがクロードの本意ではないことを見透かしていますが、クロードはあくまでも王であることを選び、孤独を受け入れてしまっているようでした。
ここでこそ主人公シェズがクロードの理解者になるべきかと思いますが、本編ではクロードはシェズを大切な仲間として扱っている一方で、心からの本音をシェズに明かす場面はありませんでした。
合議制でなく王になれば?という意見はシェズからのものであったり、クロードからどうすればいい?と愚痴られる場面があったりと他のキャラ以上に親しい距離になっているのは間違いないのですが、理解者になるには至りませんでした。
まぁ、本編でもベレスと支援Sになった直後にフォドラを離れたりとクロード自身が荒唐無稽なところはありましたが、ある意味では信頼していたからこその振る舞いだったのかもしれません。
一番の問題は・・・
今回は、本編と異なる選択ととったクロードについて考察してみました。まとめるとこんな感じ。
・クロードの信条は本編と同じだが、情勢の違いから異なる手段をとった
・王になったクロードの理解者がおらず、クロードの本音が少ないシナリオは問題
まぁでも一番の問題は、戦争の結末をブン投げていること。
レアを討った直後、いきなり「この戦争が終わるかどうかはわかりません」とのナレーションが入る。なんで???
何も言われなければ、帝国の大義名分である教団トップが排除された以上、戦争は終わりに向かうと思います。いっそ何も書いてくれないほうが戦争の終わりをイメージできるのでが、わざわざ「いや、やっぱり終わらないかもしれません」と明言する意図がわかりません。
確かにこのルートは「闇に蠢く者」たちの出番が少ないから暗躍することは考えられますが、それならきっちりそうと書いてほしい。
FEの楽しみであった後日談も今作はナシ。ラストのぶん投げが一番残念なところでした。原作と異なるシナリオ自体は面白いのに・・・
今回はここまで。読んでいただきありがとうございます。