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魔法少女ノ魔女裁判をプレイしてください

 

7月18日に発売された裁判アドベンチャー『魔法少女ノ魔女裁判』、通称『まのさば』がとてもいいゲームでした。終わってみると今年一番と言えるレベルで満足した伏兵ゲームだったので、このゲームの良さについて紹介します。ネタバレは無し。 

本作は発生した殺人事件に対して議論し矛盾を示すことでシナリオを進めるミステリー系議論ADVで、同じジャンルとしては”逆転裁判””ダンガンロンパ”シリーズが有名です。

可愛いキャラクタービジュアルと『全員、死にます』というクラウドファンディングで話題を集めたゲームですが、実は私としては悪趣味を前に押しだしたような宣伝のせいで少し微妙に感じてしまっており、プレイ前はそれほど良いゲームにならないと思っていました。

しかしプレイしてみるとシナリオ・キャラクターの描写クオリティが非常に高いうえ、議論ADVゲームとしても同ジャンルの過去作品からの系譜・進歩を感じさせられ、新しいADVの王道作品とも言えるすごい出来映えでした。
特に、露悪的な宣伝が気にさわってプレイを躊躇している人は、間違いなく全員プレイしたほうがいいゲームです。

 

ADVなのにテンポが良い 

まず驚いたのは『ADVなのにテンポが良い』という点。本作はキャラクター同士の議論によって事件を解明する裁判パートがメインですが、それ以外の事件が起こるまでの日常(?)会話パートが他の同ジャンル作品と比べてかなり短いです。また、事件発生後の捜査パートも手がかりがある場所を一度ずつ訪れるだけでよく、かなりシンプル。

事件が起こるまでのや捜査パートでの微妙なフラグ不足による進行詰まりがなく、プレイヤーとしては読み進めているだけで裁判パートを遊ぶことができたので、テンポを損ねることがありませんでした。

”なのに”と言ってしまうのはADVとしてはキャラ・世界観の表現やキャラクターの関係性構築のため会話パートが多めに必要になるのが当然で、テンポを多少落としてでも尺をとらないとキャラが活きないためです。

ただ、本作は短い会話パートの中に世界・キャラクターの表現が凝縮されていたうえ、事件内容のまとめも議論中にキャラクター同士で行うといった手法によって、裁判パートに重きが置かれるようになっています。

細かいところだと、裁判パート中の音声も気持ち早送り気味に収録されていてスピーディです。このあたりもテンポを維持する工夫なのかもしれません。
かなり”遊びやすさ”と”クオリティ”の両立に力を注いでいると思います。

キャラの立たせかたが上手すぎる

本作は13人のメインキャラクターがいますが、キャラゲーとして完璧なくらい全員に見せ場があります。

私はキャラクターについての事前情報を全く知らずプレイを始めましたが、最後には登場キャラ全員が好きになりました。(自分でも”全員好きになることあるんだ…”と思っています)

構造的に仕方ないのですがデスゲーム系では脱落するキャラがどうしても描写不足になってしまいがちで、本作でも当然死んでいくキャラもいるのですが、死亡したキャラも生存者大きな傷跡を残していったり死後に活躍機会を得られていたりと、デスゲーム系の構造的な問題に対してかなりうまくまとめています。

個人的には”ダンガンロンパ”で犯人キャラの格が下がりがちだったのが気になっていましたが、本作は犯人キャラの退場シーン。

裁判パートの流れが秀逸+間違えたくなる面白さ

裁判パートの流れも、事件を解明する展開やキャラのセリフがとても良くて面白いです。
捜査パートがあっさりめなのもあり、事前に推理をするというよりは議論によって事件を展開・発展させていく要素が多いです。
複数のキャラクターがそれぞれの立場で事件を観察することで事件の内容が二転三転したり、シナリオが進行するごとに議論の切り口を変える”味変”もあったりと、飽きのこないよう工夫があります。

事件についても13人のキャラがそれぞれ個別に持っている「魔法」の能力が活かされており、結構捻ったものもありました。

魔法についてもすぐ犯人が特定に至るものはなく、事件で解決できない問題に「このキャラがこの魔法を使えば可能では?」というように複数の視点から議論が進むことが特徴的でした。

また、議論には制限時間があるものの、指摘箇所を間違えてもペナルティは無いためガンガン間違えることが可能です。特に、間違えた時のテキスト・掛け合いが面白かった。
ノーペナルティという点では”都市伝説解体センター”もそうでしたが、積極的に間違えたくなるような仕組みはテキストがメインのゲームとして好感触ですね。

事件の背景もキャラを引き立たせるもので、これもキャラ演出に一役買っています。

議論ADVの新たな王道ゲーム

本作はテンポ・キャラ描写・ミステリー要素のすべてが高水準なシナジーを持たせた形でまとめられており、ミステリー系議論ADVの新しいハイスタンダードゲームとしての地位を確立しそうです。

唯一の欠点としてはオートセーブが無い+裁判中にセーブできない箇所があること。
そこだけ注意していただき、ぜひプレイしてみてください。

魔法少女ノ魔女裁判 公式HP

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