前回の記事で紹介したRPG「OMORI」ですが、キャラについて書きたいが何を書いてもネタバレになりそうだったので感想記事を分けました。
終盤の展開を含んだシナリオとキャラの感想・考察になります。
以下、ネタバレ有り。
↓
※シナリオ的にメインとなるサニールートのプレイ感想です。
オモリルートはプレイ中なのでこれから。
シナリオ考察と感想
ヘッドスペースと現実世界の演出
ヘッドスペースと現実世界は、ビジュアル以外でメタ的な要素でも違いが表現されているのが面白いです。
レベルの上がらない現実世界
現実世界では敵に勝っても経験値はもらえません。レベルも1のままです。
そもそもザコ敵もいないのですが・・・
ナイフ使いのサイコパス
ヘッドスペースにおいてオモリはナイフを使って戦いますが、現実世界のケンカで「攻撃」するとナイフで斬りつけることになり、突然戦闘は終了。
斬られたオーブリーは「え・・・ナイフ?マジ?ありなくない?サイコパスかよ」とドン引きされ、ケルにすら「なんでそんなもん持ってんだよ!危ないだろ!」と叱られてしまいナイフを捨てさせられます。オーブリーが釘バットで殴ってくるのは良いのか?
ヘッドスペースにおいては「オモリがナイフ使い」という印象が強まったところで、現実での異常性を明確に表現されるのがいいですね。
ピザでは傷は直せない
もう一つ大きく違うのは回復アイテム。
ヘッドスペースの戦闘パートでは、ピザやジュースといった食品が回復アイテムとして非常に役立ちます。
数多くの回復アイテムが登場しますが、でハート(HP)とジュース(MP)を大きく回復させることができます。
一方、現実世界では食品を食べても回復しません。代わりに体力を回復させるアイテムは、絆創膏と救急箱です。急に現実的にするのやめろ!現実だけど!
このあたり、現実世界が夢とは違うんだということがシナリオ・システム両面で表現されているのが良かったです。
再び揃った仲良し4人
マリが死んだことでサニーとバジルは引きこもり、仲良しだった5人の関係は大きく離れてしまいます。
が、ゲーム内でケルの訪問とヒロの帰省にともない、すれ違いながらも4人は再びパーティを組むことに。
このオーブリーとの仲直りのときのヒロがすごくかっこよかったんですよね。
「これって、いつもの2人のケンカじゃないか。仲直りすればいいだけさ。今まで何度もしてきただろ?」
数年越しのわだかまりを”いつものケンカ”として些細な問題にして解決してしまう姿は、ヘッドスペースでも現実でも変わらず頼れる兄貴分・ヒロそのものでした。
マリの死
現実世界で4人が最後の一日をみんなで過ごそうとした所で、バジルは自分の部屋に閉じこもってしまいます。
ゲーム内ではハッキリとした理由は語られませんが、サニーの引っ越しを知ったことに加え、親しかったおばあちゃんの容態が悪くなったため、心の拠り所がなくなる事を考えて精神が不安定になってしまったと思われます。
バジルとサニーを助けたいという友達の思いを感じたことで、サニーはバジルを救うためにバジルを苦しめている自分自身と向き合うことになります。
ホワイトスペースの黒い電球は、本当のことを思い出さないための象徴でした。
その黒い電球を壊すことで、サニーは真実を受け入れる決心をします。
バジルの写真を集め、追体験の形で真実が徐々に示されるのはワクワクしますね。
演奏会に向けて練習するなかでケンカをし、故意か事故かは不明ですがサニーはマリを自宅の階段から落としてしまったことでマリは死んでしまいます。それを目撃してしまったバジルは、サニーとバジルを守るためにマリの死をなにかのせいにし、裏庭でマリを吊るし自殺したことにする提案をする。「大丈夫、きっとうまくいく・・・ 」
そして、マリの死の真実はサニーとバジルの2人のなかに封印されてしまったのでした。
偽装の件:大丈夫、きっとうまくいく・・・?
いや、(うまくは)いかんでしょ。
落下死を首吊り自殺に偽装する細工が通るって検死ガバガバすぎん?体には打撲痕があるし、階段にも落下した痕跡は残るだろうし・・・
もちろんマリが吊られている光景は相当ショッキングだから、死体を詳しく見れない友人たちが知らない・知らされていないのは理解できる。
しかし、サニーの両親までも自殺と思い込んでしまうというのはちょっと違和感がありますね。
なので、サニーの親は死因と状況を程度推察するも、サニーを傷つけないためにマリの死についてサニーに追求していない・・・という事なら、なんとか成立するでしょうか?
実際、サニーを傷つけたくないという親の気持ちはゲーム内でも表現されていますので納得はできそう。真実に向き合う過程で現れる母親は、「たった一人の娘であるマリがあんなことになってしまった。サニー、あなただけはいい子でいて・・・」と言っており、マリに続いてサニーを失うことは避けたいと言っています。
もちろん、これを言っているのがあくまで”サニーの中の母親”なので推定になるんですが、現実世界のメッセージでもサニーは常に母親に気遣われているので間違ってはないハズ。
考察:”なにか”と”オモリ”
”なにか”の正体や、”オモリ”とは何なのかは演出でわかるように答え合わせがされますが、もともと曖昧な存在なこともあり、明確な文章では表されません。以下はゲーム内の演出から推定した解釈です。
間違い・解釈違いがあるかと思うので、ご容赦ください。
偽装の後、サニーとバジルの罪悪感・それぞれが感じるマリの怨念が「なにか」となり、呪いとしてゲーム終盤に至る随所で現れます。
サニーはマリを吊るす際に見てしまったマリの見開いた目が、バジルは落ちた後の髪が広がった床のマリが「なにか」の象徴となっているようです。
マリの死の真実はサニーにとって受け入れられないものだったため、マリが最初からいなかったと思い込むようになります。バジルのアルバムの中のマリをマジックで消そうとしたり、マリとの思い出であるバイオリンを封印し、マリを知る世界から遠ざかるために引きこもります。
また、マリを殺したサニー自身を許せなくなったため、サニーとは違うマリに愛される弟として作り出されたのがオモリ。夢のなかにいる間はオモリとして「ホワイトスペース」で過ごし、楽しい思い出で詰まったヘッドスペースを冒険していたわけですね。
オモリがこれまで目を背けてきた事実をサニーが受け入れたことで、サニーは事実を「乗り越える」ことができましたが、オモリは未だサニーの中に存在しています。
「マリがいない世界なんて認めないし、サニーがマリを殺したのなら死ぬべきだ。」というスタンスです。
マリを殺した事実を受け入れたうえで生きようとするサニーとオモリは共存できず、ホワイトスペースだった場所で最後の戦いをすることになります。
オモリとの戦いにおいては、ヘッドスペースの冒険でプレイヤーを助けてきた、オモリのHPが0にならない能力”オモリは屈しない”がサニーを苦しめます。
オモリがどれだけサニーを憎んでいるかが伝わりますね。
しかしマリと親友達との思い出を「大切にする」ことを決め、サニーは罪を受け入れたうえで生きる決意を固めます。
思い出の道の中でのバジルとの会話ですが、バジルは「写真(=僕たちの友情)は本当にあったことの思い出なんだ。」「間違いを犯してしまったけれど、2人ならきっと乗り越えられる」と言ったあと、「これからも新しい思い出を作って行こうね」とも言ってます。
良かった思い出も、やってしまった罪も大切に抱えて生きていくって事なんでしょう。
バジルとの約束を守るために、サニーは生きていく必要があります。心の中で開かれたマリとの最後の演奏会を終えると、オモリはサニーの中に溶けていきました。
ED後の考察:みんなに、伝えたいことがあるんだ
もう一日・・・
病室で目を覚ましたサニー。目には光が灯っており、真実から目を背けない決意が伺えます。
初回プレイでは理解が追いつかず、なんで病室にいるの!?また精神世界か!と思っちゃいました。
バジルの部屋での心の痛めつけ合いは殴り合いに発展し、両方とも救急車で運ばれてしまったと理解するまで時間がかかりましたね・・・
その後、バジルを含めた友人たち4人の前でサニーが真実を告白するところでエンディングとなります。
このときの実績表示が「もう一日・・・」だったので、サニーの引っ越しは翌日になったということですね。
オモリは許されるのか
真実を知った友人たちがどう反応するかは描かれていません。ただ、オモリ戦直前のケル・オーブリー・ヒロがサニーを鼓舞するセリフを見る限り、3人はサニーとバジルとこれからも友達でいてくれるのではないでしょうか?
マリがサニーを恨むことを求めないことは3人が良く知っているし、特にオーブリーは前日にバジルに対して死んでもおかしくない事故を起こしているし、サニーの罪を追求するということはしないはず。
恋人を失ったヒロはサニーに対して思うことがあるとは思いますが、サニーが深い心の痛みを抱えていることをヒロは察しています。その原因が罪悪感であることがわかれば、受け入れてくれるんじゃないか?作中でこれだけハイスペック・ポジティブを突き通している人がいきなりネガティブになるのも変だし、そうであって欲しいなぁ。願望。
あとはバジル。少なくとも、サニーが真実を告白して2人だけの秘密が亡くなったことで、バジルの罪悪感は開放されるはず。
約束通り、これからも2人の思い出を作ってくれ~~頼む~~
バジルの花への水やり
ところでED後、条件を満たしていればバジルとオモリに取り憑いていた”なにか”が消え、バジルとサニーは笑い合う・・・という映像が見られます。
その条件はヘッドスペースにおけるバジルが育てている花への水やりらしいのですが・・・
序盤に1度だけやったのみで、後は完全に忘れていました。
なので絶対に通る道中で水やりを忘れていた事実を見せつけられ、ブラックスペースでも念入りに言及してプレイヤーの心を抉ってくるコンボを食らってしまいました。
ブラックスペースへの道中。
か、枯れてる・・・
ブラックスペースで表現されたバジルの言葉。
人の心とか無いんか?
メインキャラ5人への感想
オモリ/サニー
主人公。現実世界でひきこもって生きるサニーと、サニーが現実逃避してヘッドスペースで冒険をするオモリ。
ゲーム開始時点では現実でもオモリ要素が強く、差異は肉体くらいしかありません。
が、ケルの訪問を機にサニーとオモリの間に乖離が生まれ、ヘッドスペースにもその影響が現れていきます。終盤にタイトル画面がサニーとオモリで揺れるのもその演出。
主人公なのでキャラクターとしては喋りませんが、現実でもヘッドスペースでも友達のことをよく見ており、大切にしていることがわかります。
バジルの家で寝ている友達3人を調べると見られるコメントも、全員に「会えないのは、寂しくなるだろう」って言ってるし。めっちゃ良かったな・・・
戦闘では悲しいポエム→刺すで防御無視攻撃のコンボを自分ひとりでできるうえ、やる気ゲージを10消費する畳み掛け攻撃のトリガーになるためアタッカーになっていた。
ケル
ヘッドスペースではお調子者。現実世界でもお調子物。
ヘッドスペースのシナリオではヒロほど活躍していませんが、個人的に現実世界においてのMVPだと思います。
なぜなら、引きこもったサニーを家から出した立役者だから。ケルがいなければサニーはバジル・オーブリー・ヒロと再会できていません。
ケルがヘッドスペース=昔と変わらない接し方をしてくれたからこそ、現実世界でもサニーは扉を開けることができたのではないでしょうか。
ケルのセリフも好きなものが多いですが、「僕らが友達だった頃は……」と言ったバジルに、さりげなく「俺は今でも友達だと思ってるぜ!」と言い直したところが一番好きですね。
オーブリー
ヘッドスペースでは、オモリのことが気になる女の子。現実世界ではヤンキー。
現実世界で一番インパクトがあった瞬間は、やっぱりオーブリー登場シーンです。
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この変わり様よ。 まさかの「荒れる」枠がオーブリーとは・・・
成長してビジュアルや性格が大きく変わるキャラが好きなのですが、オーブリーも例に漏れずお気に入りのキャラです。
マリの死以後、サニーは引きこもり、ケルとヒロも自分たちのことで精一杯となり、家庭環境が良くないことも合わさって荒れてしまった様子。
さらにバジルがアルバムのマリをマジックで消そうとしたと誤解し、友人全員と疎遠になったことからヤンキー化が進行。スケバンになってしまった・・・・
ただ根っこは変わっておらず、仲直り前後でもヒロの言うことは聞いたり、引っ越しするサニーを励ましてくれるいい子です。
また、マリの死以後にできたヤンキー友達のことも同じくらい大切にしていることがマリの家にある写真や普段の会話からわかりますね。
戦闘では、見た目に反して高い攻撃力からサブアタッカーに。防御力を下げるスラッガーも有用でした。
ヒロ
マリの恋人。ハイスペック超人であり、友人でありながら頼れる年長者。
イケメンかつ性格も良いため、ヘッドスペースにおいてシナリオのサブキャラから異常に評価されている。スイートハートからは求婚されるし、鮫羽田社長からは優秀社員として銅像を建てられている。
モブとの会話においてもヒロを先頭にしないと情報をくれなかったりとヒロageが半端ない。何個かケルにイベント分けてもいいんじゃない?
現実世界でも、池で落ちたバジルとサニーを引上げ救出するというイケメン登場をし、その後も年長者としてオーブリー・ケルの仲を取り持ったり、バジルを救うために傍で泊まる提案をしたり、オモリの代わりに家事を全部やってしまったりと、デスノートのジェバンニに引けをとらない活躍ぶり。オモリの内面世界でひたすら盛られているのも納得です。
唯一マリの死について触れるときは、セリフの端切れが悪くなってしまったりケルに心配されたりする。
戦闘ではヒーラーとしてボス戦や道中での体力回復のために奔走することになる。
バジル
みんな大好きバジルくん。当然好きになった。
ヘッドスペースでは花冠が似合う友達から知らない人に。現実世界でも助けを求めている。感情が溢れるとフォントが崩れがち。
冷静に見直しても可愛すぎるのでどうしようもない。
バジルはいくらでも虐めてよいと言わんばかりに現実でもヘッドスペースでも虐められる。
ブラックスペースとかいうバジ虐フェイズ。
彼も例に漏れず友達想いなのですが、サニーを守りたい一心から偽装を提案してしまい、その罪悪感で押し潰されてしまいます。
闇が少ないメインキャラのなかで最も友達への想いを拗らせているので、サニーへの限界感情を吐いたところをもっと吸いたかったですね。
明るいときのバジルは素直・友達想いを絵に書いたようなキャラでとてもいい子です。いい子だからこそ本編ですごいことになってるんだけど・・・
RPGパート感想(ノーマルルートのみ)
戦闘は冗長になりがち
一部の敵を除いて、その時に覚えている強い行動を繰り返せば勝てる場合が多いです。個人的には戦闘パートは作業でも問題とは思っていないのですが、色々な技を覚える割に使う戦術が少なかったな・・・・という印象。
あと、難易度は高くないのですが、敵ボスの行動パターンが少ない割にキツい攻撃が多かった印象。スイートハートやハンフリーは毎ターン全体攻撃してくるし、行動権とは別にザコを呼ぶ鮫羽田社長がキツかった印象。有利感情を重ねて維持すればよかったのかな?
経験値稼ぎはほとんどしなかったけど、スイートハートで負けて再戦したときに1-2レベルだけ上げた時にレベルの恩恵が感じられたので、ボス前の敵はできるだけ狩ってレベルを上げたほうが結果的に楽になりそう。
あと、終盤ボスの鮫羽田社長→プルートEX、スライムガールズ→ハンフリーは連戦でかなりリソースが削られた。いずれも長期戦になりやすいボスだったのも相まってかなりしんどかったな・・・
オモリルートはこれから。ヘッドスペースをより深くでき、まだ見ぬボスやダンジョンがあるみたいなので楽しみです。